男が手にしているのは、一枚のタロットカード。
これを手にしたときから、彼は変わってしまったのだろう。そのことを彼自身が自覚したのは、案外初めの頃だった。
好きだった女性との、決別。あの時から彼の中に生まれた何かが、絶対的な支配権をもって、彼を別れへと向かわせた。
昔は、彼の中で一番大切なものは彼女であったはずだ。それがいつの間にか別の何かに変わり、やがてそれは彼と彼女の間にたたずむ大きな溝となった。
しかし、その彼女も、今はもう。
彼は大空を見上げる。
どうしてこうなってしまったのだろう。
――どうして、俺は楽になれないのだろう。
彼は、手の中の【吊された男】を手に、再び歩き出した。